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もし、ハラスメントに関連したご相談(加害側、被害側、周囲の方など)や、カウンセリングの希望がありましたら、以下までご連絡をください。

監修 中村洸太(公認心理師、臨床心理士)

池袋心理教育研究所
メールアドレス:info@two-half.jpn.com

ハラスメントを正しく再発予防するために

ハラスメントが起こる背景

ハラスメントは自分自身にそのつもりがなくても「誰でもが起こしうるもの」です。

「ただ、自分の仕事を一生懸命まっとうしようとした」

「自分が育ってきた環境の中では当たり前だった」

「自分が厳しいことを言ってしっかりと引っ張っていかないといけないと思っていた」

「場を和ませようと思って、冗談のつもりだった」

以上のような理由からハラスメントが発生することは珍しいことではありません。

仕事に真剣に向き合う中で、期待するように物事が進まないことや、思うように動けていない相手に対して苛立ち、語気が強くなり、その悪循環の繰り返しから無自覚にハラスメントに陥っているようなこともあります。

しかし、いかなる理由もハラスメント行為を許すものではありません。

行為者の優秀さや功績はハラスメントを肯定しない

ハラスメント行為をしてしまう人の中には優秀な人も多くいます。しかし、優秀さが支持されるが故に「ハラスメント行為も仕方のないことだ」という雰囲気が作られてしまうことがあります。その結果、ハラスメント行為が許容されたかのような錯覚を起こし、その後も繰り返してしまうようなことも少なくありません。優秀であることがハラスメント行為を許容するものではないということは、思いの外軽視されがちですが、実際に起きがちです。

ただし、ハラスメントをしてしまったことが、その人の全てではないことも事実です。だからこそ、功績とハラスメント行為は分けて考える必要があるのです。

ハラスメントが起きた事実を受け止め、振り返ることの重要さ

中には問題認識が乏しく、ハラスメント認定を受けたことに対して不満を抱いている場合もあります。そのため単に厳重注意や処分をしただけでは、再発防止にならないどころか、かえって不信感からハラスメント認定を間違いとし、被害者を責めるような方向に向かってしまうこともあります。

だからこそ、今後同じようなことが起きないためには、何が問題であったのか、自分自身がどのような認識をしていたのか/していなかったのか、どのような経緯で起きてしまったかを振り返ることが肝要です。

まずは、何が問題であったかをきちんと認識することが再発予防の第一歩なのです。

しかし、ハラスメントを行なった人に対しては、そのような振り返りよりも、注意や処罰が下されて、個人での反省に重きが置かれることが少なくありません。

ハラスメントの認定は、意図的であったかではなく、その言動や行為の事実確認

ハラスメントの調査は「行為や言動があったか、なかったか」という点で判断されることが一般的です。ハラスメントは「そのつもりはなかった」など、経緯や想いによって許容されるようになるものではありません。

だからこそ、ハラスメントをしてしまった人が、自身のハラスメント行為の背景にある自分なりの想いや経緯を話すことは、言い訳をしているように映り、個々に想いを持つこと自体が許されないような雰囲気が生じることもあります。

ハラスメントが認定された人にも、その人なりの想いがあるのは自然なこと

ハラスメントを行なった人にもその先の人生があります。「周囲とどうやって顔を合わせていいのかわからない」「自分のキャリアは終わった」「腫れ物に触られるような日々だ」そんな不安や葛藤を抱えている人も少なくはありません。もちろん反省は必要ですが、そのような不安や孤立感から対人関係がうまく築けなくなり、結果として再びハラスメント的な関わりを持ってしまう悪循環に陥ってしまう方もいます。

ハラスメント行為は許されるものではありませんが、ハラスメントをしてしまったことに対して、その人なりの様々な想いを抱くことが許されないわけではありません。

ハラスメントについて加害側なりに抱えている想いなどを口にすることが許される環境下で、自分の言動や行為の問題点に向き合い、振り返ることが、起こしてしまった問題点をしっかりと認識することに繋がるのではないかと考えます。

しかし、そのような機会はなかなか用意されていないも現状です。

守秘義務のある第三者とのカウンセリングの場での振り返り

上記のような振り返りができる場のひとつがカウンセリングです。カウンセリングも様々ですが、1)カウンセラーは守秘義務があるので話したことが不用意に漏れることがない、2)カウンセラーは、処罰を行う立場でも利害関係がある立場でもない、目の前のクライエントの話を支持的に聴くプロフェッショナルであること、という点が特徴に挙げられます。

加害側が抱える葛藤や不安などを受容しながら、起きたことを整理し、再発がないように今後の方策を考えていくことができる場としてカウンセリングが機能するわけです。

このような取り組みは被害者からすると容認し難い印象を持つかもしれません。しかし、加害側の想いや体験を受け止めつつ、問題点を認識し、誤学習していることなどを振り返るプロセスは、加害側の意識の変容には意味を持つものであると考えます。だからといって、被害を受けた側が、加害側の事情を考慮して許さなくてはならないというわけではありません。あくまで、加害側が自分の課題と向き合うべき中でのプロセスであるということです。

ハラスメント行為以外の対処の仕方を学ぶ

自分自身の性格や価値観、コミュニケーションのあり方、ストレス対処、アンガーマネジメントなどを一緒に考えていくこともカウンセリングでは可能です。ハラスメントを行なってしまう人の中には、怒りの感情の対処や、自分の余裕がなくなってしまった時の対処が不得手な方も見られます。このような観点から、自分自身の対処法を身につけていくことも再発予防としては重要です。また、加害者の中には、自信があるように見えて、実際は自信がなく、不安が高い方も少なくありません。不安を振り払うように強い言葉を用いている人もいるため、自分自身の不安などと改めて向き合うようなことも大切です。

ハラスメントの再発防止のためのプログラムの例

起こしたハラスメントをどのように捉えているかの振り返り

ハラスメント発生のプロセスの理解

自分の性格傾向などの自己理解

自分自身に起こりがちな傾向の理解や無自覚への気づき

アンガーマネジメントやセルフケアの検討・実践・振り返り

ハラスメントに関する教育的な知識の獲得

ハラスメントを個人の問題ではなく、皆で対処すべき問題と考える

冒頭に申し上げた通り、いかなる理由があってもハラスメント行為は許されるものではありません。また、ハラスメントは環境次第で誰もが起こしうるものですが、現状ではハラスメントを行なった個人の問題として認識され、処罰が下されることも多いものです。環境要因の影響も少なくはないため、ハラスメントは個人の問題としてだけではなく、制作に関わる皆で取り組むべき問題であって欲しいと考えます。

良い作品を作ろうとする中で、感情的な物言いなどが増えてしまうようなこともあるでしょうし、そのような厳しい状況があったからこそ、良い作品が生まれたような認識が働くこともあるでしょう。しかし、そこには傷つけられ脱落せざるを得なかった人や淘汰されてしまった人などを認識せず、生き残れた人のみでその状況を肯定しようとする生存者バイアスというものが働いている可能性もあります。業務上に必要な厳しさやストイックな姿勢は重要ですが、それとハラスメントは明確に異なるものです。その行為や言動に相手へのリスペクトが含まれているかを考えることが重要です。

互いにリスペクトの心を持ち、良い作品を作っていく現場が増えることを願っています。

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